※ガチで百合テイストなので苦手な方はワンツースリーターンでお戻りくださいな。



目の前に座っている彼女の黒髪が揺れる。両サイドの高い位置で二つに縛られたそれは彼女が動くたびにゆらゆらしててとてもいい香りを私のところまで運んでくる。ああ、シャンプー同じもの使ったはずなのになあ、とか香水何使っているんだろうか、とか紅茶とお菓子の香りと混ざってなんだかとてもくらくらしてきた、とかそんなことを悶々と考えていたらいつの間にか飲んでいた紅茶が底を突いて下に溜まっていた砂糖をじゃり、と噛んでしまってとても甘い味が口の中に広がった。うわあ、ちょっと甘すぎるこれやっぱり私は紅茶はストレートかミルクティーかなあと思っていると留美の香りが先程よりも強くなったように感じた。

聞いているのですか?」
「うっひゃああ!?」
「あら、可愛らしいお声ですこと」
「ななな、なにをする!」

不思議に思ってティーカップの底から目を離すと目と鼻の先にまで留美が近づいてきていて何の遠慮もなく私のバストを鷲掴みにしてきた。(…)私はもうたまげてティーカップを落としそうになったがこれはかなり高いものだったはずだ庶民魂が叫びかけてきたお陰で落とさずには済んだが、それを見越していたのかそれともまだ何かをする気なのか私の手から流れるような手つきでティーカップを奪い取った留美はまだお菓子の類が並べられているテーブルの上へと置いた。コトン、という音がやけに大きく私の耳に入り込んできたのは、これから起きる何かを暗示してのことじゃあ、…ないよな?

「折角二人でお会いできたのにが上の空だからいけないのですわ」
「だからって急に人の胸を掴んじゃいけません!」
「だっての反応が可愛いんですもの」

にっこり、と言った擬音が付きそうな笑顔を惜しげもなく私にさらしたこの美少女は、何かにつけて私の胸を揉んでくるのだがこれはなんだろう、あれか、私のこの貧相な胸を大きくさせてくれようとしているのだろうか。それはそれはどうもありがとうございます、でもところ構わず隙をついてくるのは心臓に悪いしたしかそれはデマではなかっただろうか。確かに留美ほどの胸があったら私の悩みも少しは減るのだろうけど、それといって差し迫った悩みではないからまあいいか。心臓に悪いついでに紅龍さんのいる前でもたまに触ろうとしてくるのでそれは勘弁願います。紅龍さんはいい人だから必死に見なかったふりをしてくれるのだけれども、ちょっと赤くなった顔とか見ちゃったらね、私にもね、恥を感じる心とかあるものでね。

それでも私が本気で嫌がってないというか抵抗しないというのは、やはり私も留美のことが好きだからと自覚していますからですよ本当。留美も私が好き、私も留美が好き、はい相思相愛の出来上がり。これで私と留美の小さな世界が出来上がったわけだが、どうも私の留美への好きは留美の私への好きよりも小さいように思われているらしく、何が何でも手放すまい、という意気込みがところどころに見られていて呆れると同時に可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みというやつか。

そうです私は友情とかそんなのではなく恋愛感情、つまりは愛情で留美が好きなのです。これはまあ一般的にはホモセクシャルと呼ばれて理解されていない部分もあるわけですが、同性とはいえ人を好きになることを恥ずかしいとは思いませんね。そう思っていたなら最初から留美の近くにいないし、留美の私へ寄せる思いに応えてはいない。最初から私は同性愛者だというわけではなかったが、一途に思われてこれで心が動かなかったら私を教育してくれた今は日本に愛するダディと共に暮らしているマミーに申し訳が立ちません。人の思いを無碍にするなとは口癖だったかそうでなかったか、でも言われた覚えは何度かあるので口癖だったかもしれない。その言葉が無くても、好きになってしまったものはしょうがないのだよ皆様。好きになった人が女の子だった。それだけです、はい。どこかおかしいでしょうか。

、また考え事ですか」
「いやっ、違っ、その手はやめて…!」

このお嬢様は自分のことを見つめつつも本当は違うところを見ている、というか思考中なのでどこも見ていない私の視線がお気に召さなかったらしい。少しだけ不機嫌な顔ででも可愛らしい顔で全くその白く細い手には似合わない動きを私に見せ付けるように動かしてくださったので私は反射的に胸の前で腕をクロスさせた。しかしその白魚のような御手は私の想像した場所へは動いてこなく、無防備にもさらされた私の横腹部分へとうっわあああああああああああああああ!!!!

「うわっ、っ、はははっ、 やめっ!」
「お仕置きですわ。だってがつれないのですもの」
「っっ!うっ、ふはっっ あっ、やあっぁ、やめ てっ」
「うふふ、逃がしません。笑い転がるところを十分に見せ差し上げますからね」

そうなんともいえないほども輝いた笑顔で私の横腹脇付近首元背中ほとんどの人間がくすぐられると大笑いするという場所を思う存分手を忙しなく動かし告げられたその言葉は私にはまるで死刑宣告のようにしか聞こえなかった。



「ふっ、うあぁ、はっ、はぁ…」
「お疲れ様です」

悪魔め。まだ息の整わない私はおそらく口に出していったらまた何分もの間同じ目にあわせられるだろう言葉を心の中で呟いた。汗が滲み涙も滲み涎や鼻水は女の矜持で垂らさなかった私とはうってかわり、満足げな表情でにこにこしている17歳をこんなにも憎たらしいと思うのは珍しいが、やっと会えたというのに考え事をしていた私が悪いのだからそれは私の思考能力へ嫉妬をしたのだ、という少し無茶苦茶な理論で自分を納得させた。ああ、ソファーの感触が寝転がった状態の私には気持ちがいいなあ。

「…つかれた」
「ええ、いい笑いっぷりでしたわ。紅龍が何事かと顔を出してきたほどに」
「!うわぁっ、こんな姿見せちゃったわけか!恥ずかしい…」
「うふ、今度からは鍵かけましょうか?」
「…身の危険を感じるので遠慮します」
「あら残念」

私が留美に出会う前、おそらくお嬢様という人種に会ったことが無い人間のほとんどがこう思い込んでいるだろう『お嬢様は大人しい』という固定観念とでも言うべきものが私にもあったのだが、この超アグレッシブお嬢様に出会ってからは私はその考えを180度正さなければならないと身をもって学習してきたのだ。そうだよね、人間だって色々な性格の人がいるんだからお嬢様にだってそれは言えるよね。やっぱり小さいことに呼んだ絵本とかの影響を受けているのかな。

「それに、紅龍さんは留美の護衛だから締め出しちゃ駄目だよ」
「私はとの時間まで紅龍に同行させたくありませんわ。それに紅龍ならこれくらいのドア蹴破れます。そうでなくては困りますのよ」
「うーん、確かに紅龍さんなら出来そうだしいつもドアの外にいるから大丈夫か」
「別に見られたいのならこの部屋へ居る事を許可してもいいのですが」
「!つ、謹んで遠慮します…」
「うふふ、お利口さんですこと」

ソファーに横になったままの私の頭を留美が撫でる。ようやく息も整ってきたので起き上がろうとするが、手で静止させられなにかもぞもぞと動いたかと思うとこの体制は膝枕というものではないでしょうか。後頭部の下に留美の柔らかい太ももを感じます。私は決して変態ではない、信じてくれ。

「私、いつも留美に甘えてばかりの気がする」
「あら、私が甘やかしたいのですわ」
「…」
「照れなくてもいいのですよ?」
「だって…」
「可愛い

すっと手を取られ手の甲にキスをされる。それがなんだか騎士がお姫様に跪いて手にキスをする恭しいものに見えて、今のこの体勢と全く違うのにどうしてだろう。私は当たり前だがお姫様ではないし(どちらかと言うと留美のほうがお姫様に見える)、今の体勢は間違っても跪いているなんて言えない膝枕。なのに何故そんなものが浮かんだのかと聞かれると返答に困ってしまうが、目を瞑った留美が神聖に見えたと言えば大丈夫だろうか。何が大丈夫なのかは私にも分からないから聞いてくれるな。

「世界は変わってきています。そこで二人で幸せになりましょう、?」
「うん。…私、今のままでも留美がいれば十分幸せだけどね」
「…。そんな可愛いことを言って、どうなってもしりませんよ?」
「え?あっ、ちょっ!!」




人口甘味嬢




「もう…プロポーズくらい最後まで決めさせてくださいよ」
「え、プロポーズだったのあれ!?お願いもう一回言って!」
からキスしてくださったらいいですわよ」
「うわあああ!」


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