私、貴方を殺すことばかりを考えているわ。

「それはなんとも物騒だな。今は甘い愛の言葉が似合う場面なのだと考えるがね」

柔らかな金糸の髪が赤く染まるのを、抜けるような白い肌が黒ずむのを、都会では観葉植物の他に見ることの出来ない碧をはめ込んだような瞳が私を映さない日を思い浮かべている。まだ白く長い指が私の髪を掬い上げるように絡め取り口付ける。いつかその唇が私の名前を呼ばなくなるのを想像する。心臓のある部分の左胸付近に手を乗せて鼓動を感じる。生きている証拠。いつか動かなくなる日を思い浮かべる。


「私は君のことならなんでも分かると豪語していたのだが、やはり言わなくては分からないことはあると思う」


今私の目の前で甘い雰囲気を作り出すこの男は私の心臓を壊すような無茶ばかりをする。これでは私のほうが早くに死んでしまいそう。「言ってごらん、その唇から出る願いを聞き入れてあげよう」貴方の言葉は私には毒よ。体の奥まで深く深く染みこんで私を麻痺させてしまう。言葉を載せようとする舌がぴりぴりとするのはただの気のせいでありたいと願う。私に求めるのなら、私の希求を受け止めて。私が願うのは唯一つ。



死なないで、貴方を殺すのは私なんだから」
「約束しよう、私は君に殺されるまで死なないよ」



どうせ飛べない


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