「ロックオンが、」
「まだ本当に確定したわけじゃないけど、…っ たぶん」
「アレルヤ」
「大丈夫…大丈夫だよ。君も無茶しないで欲しい、今は動かないで」
「分かってる。昨日GN-Xのこと調べていた構成員グループに連絡がつかなくなった。…CBに裏切り者がいるって王留美が」
「うん…誰かは分かってないけど、それは僕たちも察知できてる」
「…今から戦闘が起きる。アレルヤも出るの?」
「そうだよ…決めたんだ。守るために戦うって。刹那やティエリアだって、もう決めた」
「アレルヤ、」
「…心配しないで。僕は生きるよ」
「アレルヤ、こわい」
…」
「本当は側にいたい。わたしも宇宙へ行きたい」
「駄目だ。君は地球にいてくれ」
「わたし、わたしMS乗れるよ。今から行けば間に合う。軍に、忍び込めば盗めるよ」
「駄目だ!…君は王留美のところにいれば安全なんだ!…万が一でも君を危険な目に遭わせたくない」
「…わたしアレルヤの側にいたい」
「僕だっていつもそう思ってる。…、少し楽しい話をしようか?」
「…うん」

「もう地球には慣れた?休み少ないけど、そういう日には何してる?」
「…本、読んだり。王留美に付いていって、買い物したり」
「ああ、楽しそうだね」
「最近はほとんど休みは無いから、でもあんまり疲れないし、」
「、僕も休みが欲しいなぁ。ねぇ、。この戦いが終わったら一緒に買い物に行こうか」
「うん」
「二人っきりで会って、公園でクレープ食べたりして」
「ハト、いるところがいい」
「うん、たくさん鳩がいるところにしよう。子供が餌をあげたり追いかけているところを見るんだ」
「アレルヤそういうの似合いそう」
「そう?なんだか照れるな。ねぇ、の行きたい場所も連れてってあげるよ」
「行きたい場所?」
「映画館でも、おいしいケーキのあるカフェでも、の好きなところ」
「わたし、海に行きたい」
「海?」
「まだ本物は見てないから。テレビに映ってたの、すごく青かった」
「…いいね。行こうか、海」
「約束」
「うん、約束。守るよ、絶対」

通信の切れた端末を見つめて、アレルヤは目を瞑った。トリニティの登場、擬似GNドライブの出現に先の戦闘でのロックオンの死。短い期間でいろいろなことがありすぎた。仲間を手にかけた時点でもう迷わないと決めたはずなのに、どうして自分の心はこんなにも弱いのだろう。後戻りが出来ないと突きつけられたらそこでもう揺れてしまう。

と最後に会ったのは、彼女を地球に送ったとき。その後はしばしば連絡は取っていたが、激化する戦闘の中でそれすら難しくなっていた。久しぶりに音声で通信をしてみたが、だいぶ声に感情が見えるようになったと思う。に出てきた人間らしさを嬉しく思うと同時に、少しだけ怖かった。自分でも今更だと思うのだが、が自分から離れて行ってしまうのではないかと。は強い子だ。そして何より優しい。の幸せを望むのなら自分と一緒に居ないほうがいいのだろう。だけど。

「早く…会いたいな」

こんな気持ち、一番大事な戦闘を前に抱くのはおかしいのだろう。だが、約束したんだ。この戦闘が終わったら、一緒に海に行こうって。

手に持っていた端末から機械音が聞こえた。目を開けてそれを見ると、暗号通信でメールが一件。送信者は、。言い忘れていたことがあるのだろうか。慣れた動作でメールを開く。そこにはひと言だけ、

『生きて』

らしい、無駄の無い文章。ああ、彼女も不安なんだ。僕がの安全を望むように、だってそう思ってる。会いたい。会って、抱きしめたい。きっと驚くだろうけど、すぐに抱き返してくれるだろう。スピーカーからガンダムの準備完了の旨が伝えられた。ヘルメットを持って部屋を出る。端末はベッドの上に置いたまま。これを守りきれば、暫らくは安全なのだろう。敵だって全力を挙げて戦ってくるだろうから、気は抜けないが。共倒れになったとしても、生き残る。約束したから。、地球で待ってて。約束、守るよ。


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