※ニールとライルと主人公はマフィアです。ニールとちょめちょめします。BLです。設定なんてほぼ考えてないエセマフィアです。OK?



一つ仕事に失敗した。これが組織の命運を握っていた取り返しの付かないものだったら今頃コンクリートと熱いベーゼを交わしながら海で水中花となっていただろうが、今回の仕事はそれほど重要なものではなく、他の奴が綺麗に後始末してくれたのでお前、暫らく謹慎。という軽い処罰で終わった。他の人間に手間をかけさせたとして少々の制裁は受けたが。まだガーゼが貼ってある頬に手をやりながら、俺はつい先日押し込まれた部屋をベッドの上でぐるりと見回す。極端にモノが少ない。一番目立つのがベッドで、その次が箪笥。大事なPCや高価な端末類はベッドの上や床の上に散乱していてこの部屋の持ち主は質素好きなのか単なる不精なのか、おそらく後者だろう。





謹慎と言うからには自分の部屋で大人しくしていればいいものだと思っていたのだが、ボスの部屋から出たところで自分の片割れに捕まり、乱暴な仕草で誰の物とも知らない部屋に突き飛ばされた。俺の所属しているマフィアは大概がそうだろうが屋敷が大きく、勿論部屋も多い。ファミリーに加わった時点で部屋が貰え、下っ端のうちはそこで暮らす。幹部クラスになると別荘を買いそこから通うこともできるのだが、面倒くさがりが多いためほとんどの別荘が主人不在の状態で放置され本拠地の小さい部屋が活用されている。俺もその一人で海の見える場所に別荘を買ったはいいが連絡が入るとすぐに10kmの距離を飛んでいかなくてはならないのに加え、当たり前だが通勤手当など出るはずも無く毎日ガソリンの金の排出に頭を痛めることになったので二ヶ月もしない内に使用人に全て暇を出して今は放置状態だ。話が逸れたが、つまりはこの部屋は下っ端のものかそれとも面倒くさがりな幹部のものかになる。(目の前で心底楽しそうに笑っている奴の部屋なわけがない。こいつは一度だって自分の部屋に俺を招いたことが無いんだ)話が見えない俺はどういうつもりか問い詰めようと無様に転がった状態から立ち上がろうとしたが、腹を足蹴にされて身動きが取れなくなる。

「っ てめっ!どういうつもりだ!」
「喚く元気あるんじゃないか兄さん。制裁食らったらしいから優しく慰めてやろうと思ったのに」
「お前は俺の傷口に塩を塗りこむ真似しかしねぇだろ!」
「よく分かってるじゃないか。流石は俺の兄貴なだけある」
「お前の行動パターンは全部お見通しだ」
「そんな格好で格好つけてる場合か?」
「ぐはっ!おまっ…足どけろ」
「ただの謹慎じゃあつまらないからさ。今回は少し色をつけようと思うんだ」
「ああ!?」
「兄さんは今日から一ヶ月、この部屋の奴と一緒に暮らしてもらおうか。絶対に部屋から一歩も出ては駄目だ、謹慎だからな。勿論酒も女も駄目、娯楽も駄目。この一ヶ月、兄さんは普段なら絶対しくじらないような任務を失敗したことを悔やみながら自分はどれだけ使えない人間なのか、どれだけ人様に迷惑をかけて生きているのか、どれだけ自分は社会のゴミなのか、ああライル様、このような掃き溜めが貴方様のような尊い方と共に生まれてきて申し訳ありませんと意識して生きていってもらう」
「…」
「当然この部屋の住人にも迷惑がかかる。せいぜい疎まれながら気まずい一ヶ月を過ごしやがれ馬鹿兄貴」
「…ちなみにボスはこのことを?」
「提案したら大笑いしながら許可を出してくださった。最近は他の勢力との衝突もないし、戦闘員の一人、しかも狙撃専門がいなくても差し支えはないからな。兄さん、俺たちはなんていい上司にめぐり合えたんだろうな」
「うぐぅ!?てめっ、ピンポイントで殴られたとこ踏んでんだろっ!ぐっ、どけ…っ!」
「良い眺めだな、兄さん?」
「自分と同じ顔に悪趣味だっ!!」

ものすごく楽しそうな表情で俺の腹の恐らくもう痣になっている場所をぐりぐりしてくるライルを涙目で睨みつけると、その後ろの距離の離れたところでがすっごく嫌そうなモノを見た表情で立っていた。



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