なんだか背中があったかい、と思って目が覚めたら、何故か自由に動けなくてこれが噂の金縛りか!?と未知との遭遇にどきどきしていると、私のお腹あたりでなにかがもぞりと動いたので、ん?金縛りの原因ってなにか幽霊的ななにかが巻きついてることを指すのか?と思ったけれども、私に後ろから巻きついているそれは、幽霊なんかじゃもちろんなくて、昨日なにもしないからと言い張って一緒のベッドで寝ることになった結也クンでした。

あ、あれ、昨日、確かに何もしないって言ったよね、この人。ん、いや、でも抱きつく、という行為はその何かという行為に含まれて居ないのでは、と思ったけど、でも何もといったからには何も駄目だろうと私は少し厳しい評価をした。しかし、私はこれでも昨日少し警戒して、私ははじっこに寄るようにして、結也との間には抱き枕を置いてバリケードを作っておいたんだけどなぁ。寝相ってすごいよなぁ。いつの間にか思いがけないポーズになってることあるからね。一回ベッドから頭だけ落ちるようにして寝ていたときはさすがに頭に血が上りすぎてやばかったな。あれは結也が助けてくれたので(私は頑なに起きようとしなかったらしい)事なきを得たけど。

私はがんばって今向いているのと反対の方向、つまり結也の真正面になるように、本当にがんばって動いて後ろからではなく真正面から結也に抱きしめられているように見えるように移動した。そして私からもぎゅっと結也を抱きしめる。密着している状態なので、心臓の音が聞こえる。心なしか、さっきよりも早く聞こえる。たぶん気のせいなんかじゃないだろう。私はもっと密着するように身体を寄せて、顔を結也の首あたりに摺り寄せた。


「………結也」
「………」
「起きてるよね」
「………」
「………」
「…起きてます」


正直にそう言った(でもこれは私が耳元で囁いたり首に息を吹きかけたりするのに耐えられなくなったからかもしれない)結也だが、私の背中に回している手の力を緩めようとしないで、逆に強めてくるところがなんともいえなく可愛らしいところだ。しかしそのおかげでより一層私たちは引っ付く形になって、さっきよりももっとはっきりと心臓の音が聞こえる。どくどくと、早鐘のように鳴っている音を聞くのは結構気持ちが良い。人間は心臓の音を聞くと落ち着くと何かで聞いたことがあるが、強ちまちがっていないような気がする。


「結也の心臓、すごく早い」
も、だろ」
「うん」


目を瞑ってみるとより聞こえやすくなるのは、視覚が遮られた分聴覚にその視覚の分がいくからだろうか。結也の心臓の音はもちろん聞こえるが、私の心臓の音も結也の身体に反響して伝わってくる。ドクドク、ドクドク…。すごく早い。


「ふふ…なんか生きてるなぁって実感するね」
「…なんだそれ、寝ぼけてんの」


首元に結也が笑った感覚がして、少し身じろぎをしたら、結也は何かを勘違いしたのかもっと強く抱きしめてきて、ちょっとこれ以上は無理なんですけど。その苦しさも全部、目の前のこの人から与えられているのだと思うとなんだか感慨深くて、私は苦しいのを我慢してそのままでいた。もう太陽は昇っているはずなのに、何も見えない。私に見えるのは結也だけ。そうして私はもう一度目を閉じた。






太陽が奪われた国 inserted by FC2 system